総計8ページの伝言

らき☆すたという物語について、少し思うところがある。


らき☆すたという作品は多少リアルを逸脱しておりながらもそれでいてリアルの範疇にかろうじて収まっている作品である。
それは今までも、恐らくこれからも続くこの漫画のスタイル。筆者はそう思っていた。


だがしかし。
その「最低限のリアル」からかけ離れたお話が、らき☆すたの原作に「一つだけ」存在する。


――――「ここにある彼方」。
この話では故人である泉かなたを霊として登場させ、その彼女の視点で見た物語を描いている。


本来であれば感動ものの話として受け止められるべきエピソードなのだが、筆者はここで少し疑問を感じた。
今までは、作品中に外見・設定的にファンタジックな人間がいようとも、ファンタジー的な現象はいっさい起こりえなかった。
だが、ここでは「故人の霊」という「ファンタジーやメルヘン」的な存在が出現しているのだ。
あくまで番外編的ストーリーだとはいえ、この話ばかりは少し演出がフリーダムすぎるのではないだろうか…それが、筆者の中に浮かんだ疑問だった。


だが筆者は別にこういった演出で涙を誘うことを嫌っているわけではなく、またこのようなエピソードを描いた美水かがみ氏を責めようとしているわけでもない。
ただ、故人を引っ張り出してまで伝えたいメッセージが、美水氏の胸の中にあっただけなのだ、と筆者は考える。


よく読んでみると、このエピソードはかなたの存在を必要としないものであり、あくまで泉かなたという存在はエピソードを引き立てるフレーバーでしかない。
それでも、彼女…かなたは、帰ってきた。たとえ、帰るべき場所がとうに無かろうとも。


――――「ここにある彼方」。
それは、らき☆すたという「最低限のリアル」の物語における、最初で最後の「ファンタジー」だった。


らき☆すた キャラクターソング 11

らき☆すた キャラクターソング 11